五條悟と時渡るJK〜過去いま運命論〜(dream)
□15-夜空とJK
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警察へ連絡した店長さんだけど、駅周辺の暴動が激化してて近隣の警察はすぐに向かえないからそのまま保護してほしいってお願いされてた。
お姉さんの登場で後はなんとかなりそうな雰囲気を察したから、アミは帰ろうと思って店長さんへ声をかける。
「あのッ」
「あっ、この子携帯もってますね!」
その言葉にアミはお姉さんを見る。
キッズ携帯だー、と言いながらお姉さんはオモチャ見たいに小さい携帯を手に持っていた。
「おお! やった! この子の身元が分かりそうなことある?」
店長さんも気になるみたいで、携帯をお姉さんと一緒に覗きこんでる。
「ちょっと待って下さいね。……パスワードはかかってないみたいです」
小っちゃい携帯を操作するお姉さんと、熱心に隣で見ている店長さん。
アミは帰る空気を作り出せなくて、なんとなくその場に残って様子をみてた。
「留守電が2件入ってますね」
「この子のお父さんやお母さんかも! 聞いてみよう!」
お姉さんはスピーカー状態にして、留守電を再生し始める。
『新しい留守番電話2件です。1番目のメッセージを再生します。9月9日17時49分――』
その時間はアミとごじょーさとるが、公園でバトってた時のくらいの時間だった。
『――マドより連絡いたします。渋谷上空に大型のカソウオンリョウと思われる受胎を確認。級位不明。しかし高位ジュレイと予測されます。渋谷に派遣されているゴジョウジュツシにつきましては、至急状況確認をお願いいたします』
熱のない事務的な男の人の声だった。
「え、なに。どういう意味?」
「イタズラ電話か何かでしょう」
店長さんが混乱してて、お姉さんは冷静だった。
アミはなんか嫌な予感がしちゃって、次の留守電の内容か気になってた。
『2番目のメッセージを再生します。9月9日18時20分――』
その時間はアミがごじょーさとるへ薬を飲ませた頃くらいの時間だ。
『――マドより連絡いたします。渋谷にて大型のジュレイの発生を確認。現在、発生したジュレイは渋谷上空を旋回中。ヒジュツシの中で視認できる者もあらわれているようです。ゴジョウジュツシにつきましては、至急バツジョをお願いいたします』
また熱のない事務的な声だった。でも今度は女の人の声だった。
「斬新なイタズラ電話だね」
「そう、ですね…」
2個目の留守電を聞き終えた、店長さんたちは意味不明な内容に困ってた。
でも意味不明な内容の意味不明さについて、アミだけはなんとなく分かっちゃった気がして、物凄い心臓がうるさくなる。
――え、うそ、まさか……
そうだとしてもアミには関係ないって思いながら、それでもどうしても気になったから、店長さんにお願いする。
「すみません。空が見える所ってないですか?」
「あれ、今のイタズラ電話、気になっちゃったの?」
「はい。ちょっと…」
「アハハ、まあ、僕もタバコ吸いたかったからいいよ」
そう言うと店長さんはスタッフルームの入り口でない、奥の方の扉を開いた。
そこは非常階段になってて、生ぬるい風が部屋の中に流れ込んでくる。
「ここの一個上が屋上なんだ、一緒に行こうか」
「ありがとうございます」
階段を上り始めた店長さんにアミもついていった。
※
屋上についたアミは、真っ黒な夜空を見上げる。
渋谷が光り過ぎているせいか、星ひとつない暗い暗い空だった。ただ月だけが見える。
「何もないじゃんねぇ」
煙草に火をつけながら店長さんがそう言った。
「たしかに雲はたくさんあるみたいだけど。もしかして、雲を見間違えてなんか言ってるとかかな?」
「えっ、雲?」
もう一度アミは空を見上げる。雲なんて見えない。ただ真っ暗闇の空だけだった。
「“あれ”は雲じゃないの?」
アミの言葉に店長さんがもう一度空を見上げる。
あ、そうか。って言って、タバコの灰を落としながら、店長さんは楽しそうに笑った。
「もしかして、靄(もや)とか霧(きり)って言いたいの? たしかにそっちの表現もありだね」
「……」
優しくそう言われたけど、アミは混乱してた。
それで、一つの可能性を思いつく。
「すみません。“私”目が悪いんです。メガネとってくるので、ちょっと待っててもらっていいですか?」
「あー、そうなんだ。いいよ。ゆっくり吸ってるから」
店長さんに許可をもらって、急いでさっきいたスタッフルームに戻る。
こういう急いでるのに走れない状況のとき、アミは自分のか弱さを少しだけ呪っちゃう。
※
アミがさっきいた部屋に戻ると、お姉さんが「お帰りなさい」って言ってくれた。
にっこり笑って「ありがとうございます」を言ってから、ゴルフバックの中の“ミドリちゃん”を取り出す。
――ピリリリリッッ…ピリリリリッッ…
鳴り響いた電話の音。
見たら、ごじょーさとるが持ってた、小さな携帯に着信が入ってた。
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